親族への承継(税務対策)

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事業承継に関する税金について

事業承継に伴って税金の負担が生じます。そこで、スムーズな事業承継を行うためには、この税負担について必ず検討する必要があります。
この事業承継に伴って負担する税金は、株式が後継者に移転する方法によって大きく異なるため、検討するに際しては、移転する方法ごとに誰にどのような税金の支払いが生じるのかを理解することが重要となります。

売買による承継

売買による事業承継がなされた場合、株式や事業用資産の売却により対価を得る現経営者に対して所得税が課税されます。売却価格と取得価格の差額である譲渡益に対して課税され、非上場会社の株式の場合は税率20%(所得税15%、住民税5%)です。

なお、所得税額を安くしようと時価よりも著しく低い価格で後継者に対して譲渡をすると、時価と売却価格の差額に対して贈与税が課税されることになります。(この所得税は、後継者に課税されます。)

生前贈与による承継

生前贈与による事業承継がなされた場合、株式や事業用資産の贈与を受けた後継者に対して贈与税が課税されます。贈与税には、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類があり、家族構成や財産構成等を考慮してどちらが有利であるかを判断する必要があります。

なお、いったん相続時精算課税制度を選択したら、以後その贈与者からの贈与に関して暦年課税制度を選択することはできなくなります。

暦年課税制度と相続時精算課税制度の比較
項目暦年課税制度相続時精算課税制度
概要暦年(1月1日から12月31日までの1年間)毎にその年中に贈与された価格の合計に対して贈与税を課税する制度です。将来相続関係に入る親から子への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する課税制度です。
贈与者制限なし65歳以上の親
受贈者20歳以上の子である推定相続人
選択の届出不要必要(一度選択すれば、相続時まで継続適用。)
控除基礎控除額(毎年):110万円非課税枠:2500万円(限度額まで複数年にわたり使用可)
税率基礎控除額を超えた部分に対して10%~50%の累進税率非課税枠を超えた部分に対して一律20%の税率
適用手続贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出し、納税します。選択を開始した年の翌年3月15日までに本制度を選択する旨の届出書及び申告書を提出し、納税します。
相続時精算相続税とは切り離して計算します。(相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算。)相続税の計算時に精算(合算)します。(贈与財産は贈与時の時価で評価。)
贈与税(暦年課税制度の場合)の税率表
基礎控除後の課税価額税率控除額
200万円以下の金額10%
300万円以下の金額15%10万円
400万円以下の金額20%25万円
600万円以下の金額30%65万円
1,000万円以下の金額40%125万円
1,000万円 超の金額50%225万円

中小企業庁「中小企業事業承継ハンドブック」p32より

相続による承継

相続による事業承継がなされた場合、株式や事業用資産の贈与を受けた後継者に対して相続税が課税されます。

相続税額の計算は、以下の手順で算出します。

(1) 相続税の課税価格の計算をします。
各相続人等が取得した財産の価格-被相続人の債務・葬式費用+相続等により財産を取得した人が相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与財産+相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産

(2) 課税遺産総額を計算します。
算出された課税価格から遺産にかかる基礎控除額を控除して、課税遺産総額を計算します。
算出された課税価格-遺産にかかる基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)

(3) 相続税の総額を計算します。
課税遺産総額を法定相続人の数で割って法定相続分に応ずる取得金額を算出し、この法定相続分に応ずる取得金額に相続税率をかけて相続税の総額を計算します。
課税遺産総額÷法定相続人の数×相続税の税率

相続税の税率表
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下の金額10%
3,000万円以下の金額15%50万円
5,000万円以下の金額20%200万円
1億円以下の金額30%700万円
3億円以下の金額40%1,700万円
3億円超の金額50%4,700万円

法人への譲渡に対する税金

個人株主が法人に対して著しく低い価格で株式を譲渡すると、譲られた法人の側で時価で株式を譲られたものとみなされて時価と売却価格の差額に対して法人税が課税されることになるほか、 譲渡した個人株主の側にも時価で譲渡したものとみなされて時価と売却価格の差額に対して所得税が課税されます。

また、個人株主が非上場株式を株式発行会社へ譲渡する場合には、譲渡益に対する課税のほかに、売却価格の一部が配当所得とされてみなされて課税されます。
このみなし配当課税は、総合課税の対象となり役員報酬その他の所得との合算により所得税・住民税合わせて最高50%の税率により課税される可能性があります。